情報誌・コラム|Publish・Column

ICTの潮流 / no.7
IPTV
 
2009年11月

NEW THINKING: 「勝ち残るリーダーの資質と行動」-リーダー自らが参加すれば、業績もコンプライアンスも強化できる -

教授 :安田 浩 氏放送電波を使わずに、IPネットワークを介して映像と音声を届けるIPTV の登場で、テレビの概念が変わりつつある。世界各国でその導入は始まったばかりだが、インタラクティブな機能を自在に扱えるという特徴から、新サービスの需要及び付加価値創出への期待感が高まっている。そこで、映像技術に詳しい安田教授に、IPTVの本質的な魅力と可能性を伺った。
(※この取材は2009年10月8日に行われたものです。記事はその当時の経済・技術状況を反映したものです。)

 

NEW THINKING

IPTVとはいったい何者なのか

教授 :安田 浩 氏
安田 浩 Hiroshi Yasuda
1967年東京大学工学部電子工学科卒業。1972 年に東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、日本電信電話公社に入社。NTT理事・情報通信研究所所長を経て、東京大学教授となり、先端科学技術研究センターに所属する。その後、2007年4 月より東京電機大学教授、未来科学部情報メディア学科所属。高速通信網およびその応用、インターネットおよびその応用、画像処理・画像符号化・知的財産権保護技術の研究ならびに感性工学研究に取り組んでいる。

ここ日本でも、光ファイバー回線の普及に伴って、本格的なIPTVサービスが始まりました。その代表的なサービスである『ひかりTV』は、NGN(次世代ネットワーク)を介して契約者宅のテレビへさまざまな映像配信サービスを提供しています。ビジネスモデルとしては、特定ユーザーへのマルチキャスト(*1)映像配信サービスとご理解いただくとわかりやすいでしょうが、IPTVを広義に解釈すると、「通信における関係性」の側面から別の顔が見えてきます。

従来のラジオやテレビ放送は、配信されたコンテンツをユーザーが同時に楽しむという1対nの関係です。その対極にあるのが、1 対1 の関係にある電話です。ではIPTVはどうかといえば、ブロードバンドIPネットワークを介して通信されることから、複数の人々をインタラクティブにつなぐことが可能となります。つまり、人々とネット上にあるさまざまな映像ソースが一体となって誰でも自由に伝え合える、m対n の新しい映像コミュニティを形成できるというのが、IPTVの大きな特性の1つなのです。

現在のIPTVサービスは、多チャンネル放送やビデオ・オン・デマンド(*2)などを主体としていますが、これは画像伝送というIPTVの持つ技術的特徴の一部に過ぎません。IPTVのもつ双方向性という特徴をより際立たせれば、対人だけでなく対コンテンツにおいても自由度が増すと考えられます。たとえば、全国にある定点観測カメラのリアルタイム映像をコンテンツとすることも可能になり、さらに誰もが送り手にも受け手にもなることができ、双方が自由に映像を発信できる環境も十分に整えることができるでしょう。

通信はインターネットの誕生後、使い易いドキュメント発信システムとして普及したwebによって大きく進歩しました。それまでは個人が気軽に情報発信できなかった状況を、webがホームページという形で可能にしたのです。これがいわゆる「web1.0(*3)」の世界です。そして現在、web上にはブログやSNSなどのユーザー参加型の場が広がり、一方的に情報が発信されていた「web1.0」の世界から、誰もが参加できるコミュニティの世界である「web2.0(*3)」へと進んできました。

こうした観点から考察すると、IPTVが持つ映像によるm対n双方向コミュニケーションの可能性は、会いたい人や見たい映像を自由自在に選んで瞬時に疑似体験できる「web3.0(*3)」の世界だといえるでしょう。「As you like(お気に召すままに)」という言葉がありますが、まさにそれを実現するかのように、IPTVは「見たいものを見ることができる」「行きたいところにすぐ行ける」「すべてを自分の好きなように選べる」を可能にします。

あなたがテレビの前でおにぎりを食べようとしているとしましょう。将来のIPTVでは既定の番組を楽しむほかに、ネット上にあるさまざまな映像サーバーから好みの景勝地のリアルタイム映像を検索し、今の気分にぴったりな“景色”を楽しみながらピクニック気分を味わうこともできる。それはあたかも世界中を瞬間移動するような、まったく新しい体験となるはずです。

【用語注釈】

  *1:マルチキャスト
ネットワーク上で特定の複数ユーザーに対して同時にデータを送信すること。
  *2:ビデオ・オン・デマンド
視聴者が観たいときに観たいビデオを選択して視聴できるサービス。
  *3:web1.0 web2.0 web3.0
web1.0:web1.0、web2.0やweb3.0などと表すweb n.0は、web関連技術やwebを通じたサービスなどの総称としての世代区分のこと。従来型の発展ではなく、特定の技術やコンセプトによって、質的な大きな変化が起きた場合に数字が切り替わる。現在はweb2.0の世代であり、web3.0についての明確な定義はこれから。
来るべきweb3.0は、個性の時代

出典:ReadWriteWebが行ったweb3.0の定義コンテストで優秀作として選定された定義。 http://www.readwriteweb.com/archives/define_web_30_contest_winners.php